2019年6月、ラグビー歴20年の私は人生で一番大きな怪我をした。前十字靭帯の断裂だった。 マイボールスクラムからのプレーだった。私たちのチームがスクラムを押した。こらえきれずに相手はスクラムを崩した。ペナルティーを貰ったと思った。ところがレフリーは味方のスクラムハーフに「Use it」（ボールを出しなさい）の声をかけた。予期せぬタイミングでボールはスタンドオフの私のところに届いた。 2人の敵選手が勢いよく私に襲い掛かった。私はタックルを食らった。勢いよく地面に倒れた。その時に、「バチンッ」と大きな音が体中に響き渡った。一瞬で膝が切れたことを悟った。すぐに担架が運ばれ、グラウンドの外に運ばれた。観客席からは、拍手が聞こえてきた。「やめてくれ。見ないでくれ」。そう思いながら、私は腕で顔を隠した。 救護室に運ばれドクターが私の膝を触る。チームのスタッフも全員駆け付けた。監督のスティーブは試合終了後、すぐに私のもとへ走ってきてくれた。 スティーブの顔を見て私は大泣きした。”Sorry” と言った私を、スティーブは” It’s OK don’t worry! ” と言い、強く抱きしめてくれた。 それから2日後、病院に行きMRIをとった。診断結果は、「前十字靭帯の断裂」だった。 先生もトレーナーも、私のことを励ました。「大丈夫、しっかりリハビリをすれば1年以内には戻れる」と。私は手術を受けることを決意した。 この日、ラグビーでトップを目指すのは諦めた。何人も靭帯を切った選手たちを見てきた。私はそこまでラグビーをする理由が見つけられなかったか。25歳でラグビーを引退しようと決め、残りの2年、楽しくプレーするためにリハビリを頑張ることにした。 手術を受けた3日後、チームは入れ替え戦に負け、下部に降格した。本来ならばプレーしていたはずの舞台に立てず、自分が情けなくなった。過去を振り返り、悔やんで、一人病室で泣いた。チームドクターの長谷川先生がお菓子をもってきてくれた。「蘭、あきらめるな」と一言だけ残し、部屋を出て行った。 私は、また決意した。1年後、更に強くなってグラウンドに戻る。チームの試合にスタメンで出続け、勝利に貢献する。そしてラグビーをあきらめないことを。 あれから2年、コロナの影響で十分に試合ができない日々が続いている。でもあの時、自分と交わした約束をいつか果たしたい。 そのために今日も練習をする。 私も頑張るから リハビリに励む仲間たちへ。 共に頑張ろう。