【北上ツーリング5日目】 ※投稿は実際の旅とタイムラグがあります。リアルタイムはストーリーにて。 * * この日のルートは 能登半島の江尻屋→輪島朝市→白川郷→飛騨高山のさくらゲストハウス * * 台風で足止めを食らった能登半島に別れを告げる前に、輪島朝市で腹ごしらえ。 * * 売り子のおばちゃんの元気の良い言葉に誘われ、気づいたらフグとノドグロを手に入れていた。 上手いもんだ！と思わず笑いながら言葉を交わす。 * 商売上手は嫌いじゃないんだ。 * * ここ、朝市で買った魚は無料の炭火焼コーナーで焼くことができる。 * フグは焼いても身がプリプリ。 ノドグロは甘みのある脂がのっていた。 * 「朝からサイコー！」と胃袋はハイテンション。 結局焼き魚に触発され、白米も食べたくなって隣の食堂で「鯛のあら汁とご飯セット」を注文した。 * 胃袋の欲求には従うが吉。 * 汁を啜っていると、器から現れたのは縁起物 「鳴門骨（なるとほね）」の真鯛だった。 * 荒波でもまれた真鯛にしかできないといわれる、自然界の猛者の証。 * 思わず、波間を抜け命を届けてくれた鯛に思いを馳せる…。 * * その後、お目当ての千里浜なぎさドライブウェイはあいにく悪天候による通行止め。 帰路で寄ることを誓いつつ半島を後にした。 * * 次の目的地は白川郷。 * 私は「建築」「自然（特に山）」「人」への興味が強いのだが、目に飛び込んできたのは旅に出る前に読んだ本に載っていた造りそのままの姿…！！ * 興奮と感動。 頭でメモしていた程度の「ただの知識」が、「全身に染み入る知見」に変わる瞬間だ。 この感覚がくせになるから「自分で見に行く、会いに行く」はやめられない。 * * 家は人が住み、使うことで保たれるのだと実感し、垣間見える生活に心が震えた。 * 特に大好きなのが囲炉裏周り。 * 囲炉裏上部、火棚（火天）とそれらを吊るす縄は、200年煙にさらされ、含まれる油分と煤で炭化し、艶めいていた。 * 年中火は焚かれ、これらを通った煙が、天井の茅の耐久性を高めている。 * * 使い込まれた道具には自然と敬意さえ覚える。 付喪神や八百万の神という思想に近いのかもしれない。 * * 今夜も、あの囲炉裏には火が灯り、煙が茅を抜けるのだろうと静かな興奮を覚えつつ敷居を跨ぎ出る。 * * さぁ、あとはキャンプ場を目指すのみ！ * しかしチェックインギリギリの時間だな、ガソリンも少ない。 Mapを確認し…と急いでいたその時。 * * 事故。 * * やってしまった…。 * * 頭は真っ白。 夕方の山に一人、暗闇が迫る。 * * 前日の台風で散らかる枝や枯れ葉にタイヤを取られ、ハッと気づいた時には目の前に現れた山肌。 左車体をガリガリと擦ってしまったのだ。 ハンドルを切ったが間に合わなかった。 * * 無残に破れたシートバッグのレインカバーから覗く、擦り切れたサイドバッグ。 ファスナーは壊れて開かない。 * * スマホのライトをかりて車体を点検。 * * 大きな故障は無くエンジンもかかるが、やはりショックは大きい。 * * 咄嗟に山肌に手をついたので、左掌から血が出ていた。 左グローブが無いことに気付いたが、どんどん深くなる闇の中、30分探しても見つからなかった。 * * 「グローブはワークマンで買えば良いし、早くキャンプ場に着くのが先決」 と冷静さと気を取り直す。 一人旅は全て自己責任、孤独と向き合う。 * * ありがたいことに、少し走ると街に入った。 さっきまでの峠はなんだったのだ。 * * 優先順位として、ガソリンスタンド、ワークマンに寄り、駐車場で宿を検索。 もうキャンプをする気力は無い。冷静さを取り戻すために早めに身体を休めなくてはいけないと判断した。 * * 幸い、そこから10分のところに綺麗で一晩2000円のゲストハウスを発見。 飛騨高山にあるさくらゲストハウスだ。 * * あっと言う間に到着し、フロントのおじさんと会話すると緊張がほぐれた。 ドミトリーだったが、他に客は居ないため貸し切り状態。 これ幸いと荷物を思う存分広げて点検。 シートバッグとレインウェアが擦れていた以外は問題無かった。 * * シャワーを浴びて、台所で夕飯。 コトリコトリと静かな夜に音が響く。 サービスの熱い紅茶を飲むとようやく心から落ち着いた。 * * 身体を点検すると足と手に打ち身があったものの、「こうしちゃいられない、明日は登山をするぞ！」と美しい飛騨高山の景色に気持ちは昂ぶる。 * * SNSでたくさんの人とメッセージを交わし、眠りについた。 良い時代に生まれたもんだ。 * * 急いでいるとき、焦っているときは怪我をしやすい。 改めて、自分を戒め旅の安全を願う。 * * #輪島朝市 #日本一周 #日本一周バイク旅