さて今回の症例の方です。鼻中隔湾曲・斜鼻に対する矯正術、鷲鼻形成術、他院で挿入されたオステオポール除去、鼻中隔軟骨・耳介軟骨を用いた鼻尖形成術を施行しました。鼻の中の構造に対しては私が、外側の形に対しては上原先生が担当しました。 この方は正面から見ると鼻は(本人から見て)右側に曲がっていました。CTで見ると、軟骨はCTで白く写ってこないので、鼻骨が画像では右に曲がっているのが分かります。内側では鼻中隔が左側に曲がっています。前回の「屋根」と「柱」の話に落としこむと、柱が伸びすぎたために柱自体が左に曲がり、伸びすぎた柱が屋根を右に曲げてしまっていると考えられました。 このような場合、 ① 弯曲した軟骨及び骨を切除する この時、取りすぎてしまうと柱の強度が下がってしまうので切除する部分は出来るだけ最小限にします。大きく切除する必要がある場合にはトリミングして再度戻して縫い付けて補強することもあります。曲がっている部分を切除するだけで、屋根の歪み、曲がりも解消される方も中にはいます。また鼻詰まりがある方は下鼻甲介という、鼻の通り道の外側の壁の処理（骨もしくは粘膜下組織を削除する）こともあります。 ② 鷲鼻の原因となっている鼻骨・鼻中隔軟骨の上端・外側鼻軟骨を削る 鷲鼻があることで鷲鼻部分よりも下側が垂れ下がったように見えてしまうので、この部分を削って鼻筋を滑らかにします。この方は屋根である鼻骨と外側鼻軟骨と柱の上端である鼻中隔軟骨の両方とも出っ張っていたので両方削っています。こうすることで横から見た時の、すっと直線的なきれいな鼻のラインを作ります。 ③ 鼻骨骨切り幅寄せ 鼻筋が太いことを気にされる方は、プロテーゼを入れて鼻根部の高さを出しつつ鼻筋を細くすることも一つの方法ですが、この鼻骨の部分の両側を切って中央に寄せることで鼻筋(光が当たる部分)を細くすることが出来ます。このときに鼻筋の曲がりも調整しています。 ④ 耳介軟骨・鼻中隔軟骨を用いた鼻尖形成 さてこの方の問題点は、鼻尖部にオステオポールという異物が入れられていた点です。鼻尖部に異物を入れて鼻先を高くする手術は勧められません。それには理由があるのですが、それはまたまた違うポストでお話ししますね。 オステオポールによって大鼻翼軟骨に変形、癒着、菲薄化、強度の低下をきたしていたため、オステオポールとの癒着を丁寧に剥がし、大鼻翼軟骨の角度を変え、鼻中隔軟骨と耳介軟骨を用いて鼻尖・鼻柱の形成をしました。 といった内側・外側の複合的な手術でこの方の手術を行いましたよ。まだまだ術後１週間なので腫れが強い時期ではありますが、曲がりを直し、すっと通った上向きの鼻先を作りました。斜鼻・鼻中隔弯曲がある方で、美容的な尺度から鼻の理想の形がある方はこのような方法で手術行っておりますが、理想とする鼻の形が可能かどうか、もともとのお鼻の状態、軟骨の厚さや強度、皮膚や脂肪の厚さなどの条件によっても変わりますのでまずは診察にいらしていただければと思いますが、ご参考までに。 #鼻閉 #鼻づまり #斜鼻 #鼻尖形成 #オステオポール除去 #鼻骨骨切り幅寄せ #プロテーゼ #鼻中隔延長 #耳介軟骨移植 #鼻先 #小鼻 #美容外科 #鼻整形 #rhinoplasty #美容皮膚科

花粉が大いに飛散していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は昨年よりも多く飛んでいるため、外来に来られる方が増えている印象です。 さて、最近よく聞かれるのが、花粉症ボトックスってどうですか？という質問。 私としては患者さんに行ったことがないのであくまで論文ベースによる解答と考察、意見になります。 が、個人的には「効果はあるかもしれないけど、費用対効果を考えたら保険診療で飲み薬貰ったり、レーザー治療、最重症の方は皮下注射(ゾレア)、手術など保険診療で十分効果得られるからその方がいいんじゃない？」です。 何故なら、鼻炎に対するボトックス治療は1990年代から行われていて、有効性があるのではないかとは言われていました。特に2008年Yangらが発表した研究では、ボトックス、ステロイド、そしてプラセボの生理食塩水を鼻の中下鼻甲介に注入して、その効果を比較したところ、20週にわたって鼻炎症状を有意に改善したと述べています。 日本では埼玉医科大学の上條先生と山梨大学の増山先生が、2009年から山梨大学の倫理委員会の承認を経て行った研究では、ボトックス20単位群と生理食塩水投与群に分けてそれぞれ注入し、その効果を比較しました。鼻の症状は両群間で差が得られなかったものの、症状に対する花粉症の薬剤使用スコアは有意にボトックス投与群で減少していたと報告していました。その翌年行った同じ研究では鼻症状も薬剤使用の両方ともボトックスと生理食塩水群で差がなかったと述べ、その要因については、花粉飛散時期より早くボトックスを投与すると、鼻炎症状がないために、毒素が神経終末に取り込まれにくくなって効果が落ちてしまうのではないかと考察しています。 で。で、ですよ。論文を読んでいるとこれらの研究では「下鼻甲介」にボトックスを「注入」しているんですよね。Yangの研究に至っては「5分以上かけて、ゆっくり」と記載されています。実際問題、いくら麻酔しているとはいえ片方の鼻に5分以上針が刺さった状態なのは患者さんにとっては辛いんじゃないかという問題が一つ。2015年に上條先生はボトックスをそれぞれ20単位ずつ含んだガーゼを鼻腔内に挿入して下鼻甲介に20分あてて、抜去、要は注入という痛みが伴う方法ではなく、鼻の中にガーゼを入れるだけの処置でも効果があるのかについて発表していましたが、その結果は、ボトックス使用群の方が花粉症の薬を使用する頻度が減っていたとのことでした。針を刺さなくても点鼻やボトックスを浸したガーゼを20分入れておくだけでも効果がある可能性も指摘しています。ただ、本当に分子量の大きなものが粘膜から本当に取り込まれるのか？という疑問が個人的にはあります。 難しい話をすると、鼻の粘膜に抗原の刺激が入ると、知覚神経終末に対するヒスタミン刺激効果が、鼻粘膜過敏性もあって増幅して中枢に伝えられて副交感神経反射よって神経終末から遊離するアセチルコリンが鼻腺に作用して鼻水が出るという機序なので、ボツリヌス毒素は神経からのアセチルコリンが放出されるのを抑えることから、ボトックスを注入すると鼻水が抑えられるというのは理論的には間違ってはいないのですよね。 もし私がどうしてもやってほしいと言われたら25単位/1cc生理食塩水を下鼻甲介粘膜下にカテラン針を使って全体にいきわたる様に注入します、が…..そんな痛い思いをしなくても…しかも保険診療と比べると金額も高いし....薬飲もう？鼻づまりつらいならシーズン終わったらレーザー治療しよ？え、どっちも効かない？それなら…といろいろ手段はあるので、まずは専門医に相談するのでも良いのではないでしょうか🙃 Murat Unal, Serhan Sevim, Okan Doğu et al. Effect of Botulinum Toxin Type A on Nasal Symptoms in Patients with Allergic Rhinitis: A Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial. Acta Otolaryngol. 2003 Dec;123(9):1060-3. Tae Yong Yang, Yoon Gun Jung, Young Hyo Kim et al. A comparison of the effects of botulinum toxin A and steroid injection on nasal allergy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2008 Sep;139(3):367-71. 上 條 篤，増 山 敬 祐，E-BOAT study group. 花粉症に対するボツリヌス治療の現状. 日 鼻 誌 51 ⑴：70 ～ 71，2012.

インスタにおける需要をすっ飛ばして、ただただ鼻が好きな私、普段の保険診療では主に鼻の手術をしています。(それが専門なので) そんな訳でちょっと今日はお鼻のおはなし。 ええ、ただ喋り散らかしたいだけでございます🤣ﾁｰﾝ 例えば鼻中隔弯曲症。 鼻の右と左の空間を分ける仕切りのような役割をしている部分が曲がっていることを言います。 これが起こる原因としては、頭蓋骨と顔面の骨、軟骨が成長過程でそのスピードがズレるためとされていますが、ホントのところの原因は不明です。子供にもありますが、大人では約80-90%に見られます。鼻閉(鼻詰まり)がなく、鼻内に病的な所見がないものは単なる鼻中隔の曲がりであって疾患(治療が必要な病気)ではありません。   私もこんなふうに鼻中隔弯曲がありますが（写真2枚目）、特段鼻づまりはありません。ちなみに、あまりにも曲がりが酷くて鼻中隔が下鼻甲介という鼻の空間の外側の壁に突き刺さっていると頭痛が起きることがあり、「鼻粘膜接触点頭痛」というのですが、あまりにも稀すぎて私は今までに1人しか見たことがありません...。   それはさておき、曲がりの発生場所として鼻中隔軟骨、篩骨正中板、上顎骨がつながる部位が多いですが、他にも軟骨自体が大きくたわんでいたり、軟骨と後方の骨で対側にS字状に歪んでいたり人によって様々です。 この手術をするときにいくつか方法があるのですが、これが結構奥が深い。 弯曲の場所、3次元的な方向を考えずに単一の方法でやっていると、鼻詰まりを直そうとして手術したはずなのに予期しない変形などをきたすことがあるんですね。鼻の整形をしようとして曲がる人にも同じような原因が当てはまることもあります。   なぜなら、鼻はただ顔の中央に存在しているわけではなくて色んな「力」を受けています。例えば皮膚の張力(縮もうとする)、表情筋の動き(縮む、引っ張られる)、それに対し鼻中隔軟骨は弾力があるためそれに抵抗するように外向きの力で支えています。 このバランスが取れていることであの「鼻」の形を保っています。成長の過程で鼻中隔軟骨が余分に成長した場合には、外側からの内向きの力によって曲がります、さらに鼻中隔軟骨が成長した場合には鼻を高くするだけでなく、外鼻を曲げてしまうが故に斜鼻(鼻が斜めになる)を形成することもあります。   曲がった鼻中隔を直そうとした場合や、鼻尖形成などで移植片(graft)として鼻中隔軟骨を使用しようと採取する時に切開・切除を加えることは、曲がっている部分の余分な圧力を解除することにはなりますが、その外力と内力のバランスを崩すことにも繋がります。 斜鼻のような外鼻変形（見た目の変形）を伴わない場合は構造や力関係が安定しているので問題ないことが多いのですが、弯曲部分を切除することは一般的な手術の方法ではありますが、それに加えて現在は術後の変形を予防するために鼻中隔軟骨は出来るだけ温存するように、切除した場合にはその軟骨を添え木のように使って補強するようにしています。 さてこれらのことを考慮すると、鼻中隔延長でも同じことが言えて、この外力と内力のバランスよりも長くしたい場合、内側から外側への無理な力がかかればかかるほど変形しやすくなります。そのためにgraftとして使用する軟骨もより強い（鼻中隔軟骨→耳介軟骨→肋軟骨）ものが必要になります。元々の軟骨の柔らかさにもよりますけどね。皮膚や皮下組織が厚かったり、硬かったりよりテンションがかかりやすい人も注意が必要です。 以上、鼻についてのあれこれでした。   参考文献） A practical classification of septonasal deviation and an effective guide to septal surgery. Plast Reconstr Surg. 1999 Dec;104(7):2202-9 Jang YJ : Septoplasty. Rhinoplasty and Septoplasty. Jang YJ (ed). Koon Ja Publishing Inc; 2014: p.75‒92. 児玉 悟：鼻中隔矯正術と外鼻形成術．日耳鼻 2015； 118：1406‒1413． 飯村慈朗,中上桂吾,他：鼻中隔矯正術後の外鼻変形・鼻弁狭窄に対して Open septorhinoplastyを要した症例. 日 鼻 誌 56（2）：160 ～ 166，2017 高橋良：鼻はなぜあるのか．築地書館，東京； 1987：p.1‒239 #nose #鼻中隔湾曲症 #鼻中隔延長 #nosejob #鼻整形 #美容外科